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黒字倒産を防ぐ「キャッシュフロー計算書」の作成
キャッシュフロー計算書は第3の財務諸表
黒字倒産という言葉があります。
小規模ビジネスの場合は社長の目が行き届くため少ないですが、企業がある程度の規模になってくると起こり得ます。特に急成長した会社では、売掛金や在庫の膨らみで損益計算書上は黒字、資金繰りでは赤字という状態になりがちです。会社は利益が赤字でも倒産しませんが、キャッシュがなくなれば倒産せざるを得ません。
そこで、自社のキャッシュの流れを正確に把握しておくことは大切です。
そのとき役立つのが、キャッシュフロー計算書(CF計算書)と呼ばれるもので、損益計算書及び貸借対照法と並んで第3の財務諸表といわれています。
営業、投資、財務の3つに区分
図にあるように、CF計算書は、「営業活動によるキャッシュフロー(CF)」、「投資活動によるCF」、「財務活動によるCF」の3つに分かれます。
営業CFでは、会社が産み出すことのできるキャッシュベースでの儲けを表していますが、機械の購入などの投資部分や借入の返済などの財務部分は除かれています。まずはこの営業CFがプラスでない会社は、危険信号であるとお考え下さい。
次に、投資CFでは、機械や車などの固定資産を購入すればマイナス、資産の売却などによるキャッシュインがあればプラスとなります。創業5年以内という前提で考えると、まだまだ会社資産が不足しているでしょうから、過大でないという前提で、ある程度の投資は必要な時期ではないかと思います。必要な投資を行うことによるマイナスは、健全であるといえます。
そして、先述の営業CFと投資CFを足したものが、フリーキャッシュフローと呼ばれるものです。フリーCFとは、必要な投資を行った後の現金増加額ですから、原則その会社が自由に使えるお金を表しています。営業CFをプラスに持っていくのが一番重要ですが、次に重要なのはこのフリーCFをプラスにすることです。
最後に財務CFですが、これは銀行からの借入があるとプラスに、返済があるとマイナスになります。この部分は会社のステージによって判断は異なりますが、一般的には借入返済が順調に進んでいるマイナスが良い状態であるといえます。
金融機関もみています
このCF計算書ですが、上場企業では法律上作成が義務付けられています。一方、中小企業においてはその作成が任意となっていて、なかなか浸透していないのが現状です。
しかし、金融機関は、損益計算書の黒字と並んでCF計算書の黒字を重要視しています。特に営業CFやフリーCFがプラスかどうかは重要です。実際、融資審査時には、自行内でCF計算書を作成しているようです。ということは、こちらから積極的にCF計算書を作成して提出できれば、金融機関に良い印象をもってもらえることでしょう。
また、金融機関がCF計算書を作成する別の理由は、粉飾決算を見抜くためでもあります。
例えば、架空の売上や棚卸資産を計上した場合、損益計算書上では利益が増えますが、CF計算書上では利益の増加分と営業債権や棚卸資産の増加分が相殺されて現金は増加しません。こういった分析から金融機関が異常値を発見することもあります。
営業CFプラスが原則
次に、3区分のキャッシュフローがプラスかマイナスかでどういったことが読み取れるのかを図を参考に分析してみます。ただし金額の多寡によって大きく判断は変わりますので、あくまで一般論としてお考え下さい。
まずは、「営業CFがプラスで投資及び財務CFがマイナスの会社」ですが、これは一般的に営業活動などで儲けを稼ぎ出し、その資金で投資や借入返済を行っている状態ですから健全であるといえます。また、上記で財務CFがプラスの場合は、営業活動などでの儲けと借入資金の合計を投資に回している状態ですから、成長過程の会社といえます。
「営業及び投資CFがプラスで財務CFがマイナスの会社」は、営業活動などでの儲けと不要資産の売却などで得た資金を借入返済に回している状態ですから、財務体質改善中の会社であるといえます。
また「営業CFがマイナスで投資及び財務CFがプラスの会社」は、営業活動などでのマイナスを不要資産の売却や新規借入でまかなっている状態ですから、借金体質の会社であるといえます。早急にビジネスモデルの再構築など抜本的な改善を行わないといけません。
取引条件を改善する
キャッシュフロー計算書で最も大事なのは、営業活動できっちりとお金を稼ぎ出すことです。ここでいうお金とは利益ではありません。現預金残高の増加を意味するキャッシュの増加です。
そのためには、「資金繰り改善5ケ条」として、「売上サイトを出来るだけ短く、仕入サイトは問題の無い程度に出来るだけ長く、在庫はなるべく少なく、固定資産もなるべく少なく、前受けビジネスの検討」を行うと、資金繰りが改善されます。
つまり、営業結果は変わらずとも、取引条件の見直しだけでキャッシュフローはプラスにすることが可能なのです。これが損益計算書での利益との大きな違いでもあります。
キャッシュフローをプラスにもっていくのは、経営者の大事な仕事であると思います。
2008.10.1執筆
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
今村 仁
「節税は義務、納税は権利」がモットーです。
自分の半生について、取材を受けました。